合同会社設立申請前の準備②

会社の設立を申請する前に決めておかなければならないことを整理しておきます。前回は「会社の住所を決める」で、今回はその第2弾「会社の名前を決める」「会社の事業内容を決める」です。

会社の名前を決める

以前は会社登記を行う同じ市区町村内に同じ名前の会社は設立できませんでした。しかし2006年の会社法施行により類似商号規制は撤廃されて、現在では本店所在地が異なる場合であれば、同一市区町村内であっても同じ名前の会社を設立することが可能になっています(逆にいえば、会社の住所が同じ場合には、同じ名前の会社は設立できないことになります)。
では名前は自由につけてよいのかというとそうでもなくて、著名な他社の商号に似せた名称を使うことや、銀行でもないのに「銀行」を名乗ることはできません。それでも、このあたりの制限事項に気をつけていれば、会社の名前に厳しすぎる制限がついていることはないと考えてよいでしょう。せっかくなのでオリジナルの名前をつけたいものです。

ちなみに会社の名前(商号)は登記・供託オンライン申請システムで調査できます。

会社の名前 制約

合同会社の場合は、会社の名前の前か後に「合同会社」をつけなければなりません。例えば、会社の名前を“ITほげほげ”としたいのなら、「合同会社ITほげほげ」か「ITほげほげ合同会社」のどちらかになるということです。そのほかには、以下のような制限があります。

  • 使える文字に制限がある。
    • 漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット、数字と、いくつかの記号
  • 会社の支店や一部門名のような名前はつけられない。
    • 「〇〇支店」「〇〇事業部」のような名前はつけられない。
  • 特定の業種を示すもの、公序良俗に反するものなども使えない。
    • 例:「銀行」は、銀行以外の会社では使えない。

一般的には、会社の事業や考えを端的にあらわした名前がよいようです。くわえて、例えばですが、読みやすい、覚えやすい、長すぎないといったものがよいでしょう。

会社の名前を決めたら、のちのち会社名の読み仮名を申請書に記載する必要がでてきますので、会社の名前の読み仮名も決めておきましょう。
上記の例で説明すると、会社の名前が“ITほげほげ”であったとしたら、これは「アイティーホゲホゲ」と読むのか、それとも「アイテーホゲホゲ」と読ませるのかというようなことです。読み方に揺れがあるのはまずいので、この段階で決めておくのがよいと思います。

会社の名前 英語名

日本語の会社の名前を決めたら、英語名も考えておくことにしましょう。
会社の英語名は、名刺でも使うことが考えられるます。また会社の英語名を使ったドメイン名を取得して、Webページやメールアドレスを作成することが考えられますので、英語名を考えておくことは重要です。

会社の英語名を決めたら、ドメイン名の想定も考えておくほうがいいと思います。
例えば“ITほげほげ”という会社の名前の英語名を“IT hogehoge”としたとします。この場合、ドメイン名としては“it-hogehoge”にするのか“it_hogehoge”なのか、 はたまた“ithogehoge”なのかというようなことです。
そしてドメイン名として実際に取得できそうかどうかは、ドメイン名取得ができるプロバイダが提供しているドメイン名の検索で確かめることができるので確認しておいたらよいかもしれません。
この段階ではTLD(Top Level Domain)を何にしようか(例:”.com”にするとか”.jp”にしたい とかです)決まっていないでしょうから、TLDや2LD(2nd Level Domain)を適当に付加してみて、 例えば“it-hogehoge.com”や “it_hogehoge.co.jp”を検索してみるとよいでしょう。

会社の事業内容を決める

次に会社の事業内容を決めておきます。
会社の事業内容は、会社の定款に書くもっとも重要な記述といってよいと思います。

筆者がすすめる、事業内容の決めかたは以下のようなものになります。

  • 事業は多くても“3つ”くらいにする(別に1つだけや2つ、4つあるいはそれ以上が悪いというわけではありません)。
    • 数が多いと、外部からみて、なにをしたい会社なのかがわからなくなるので避けたほうがよいようです。
    • 近い将来に行いそうな事業は入れておく(そうすれば定款を変更しなくて済みます)のがよいと思います。しかし、遠い将来に行うかもしれない事業(ホントにやるかどうかアヤシイと考えているような事業)は入れないほうがよいでしょう。
      • 事業実態がまったくともなわない事業を定款にくわえているのはあらぬ疑いのもとになりかねません。定款の変更は、お金はかかりますが、いつでも可能ですので心配ありません。
  • 選んだ事業のうち、主に取り組む事業を1つ目に置くようにします。
    • 申請書によっては事業を1つだけ書く場合があるので、その場合には1つ目の事業内容を短くしたものを書くようにするとよいでしょう。
  • 選んだ事業は互いに、微妙に関連しているもののなかから選ぶとよい気がします。
    • どう考えてもひとり社長が一つの会社でこなすのが困難に思えるような、互いにまったく関係のない事業を並べるのは無理があるでしょう。
  • 選んだ事業は、定款に記載することになるので注意します。
    • 定款に記載の事業以外は、会社の事業とはみなされないことになるので注意するのがよいでしょう。
    • 例えば会社の事業として3つ選んだとして、それを定款に書くときには、定款上は4つ目の事業として「前各号に附帯する一切の事業」と書くことになります。ですので、会社の事業として選ぶ3つの事業は本当に自分がやろうと考えている事業に絞るようにしましょう。

会社の事業 制約

会社の事業として書ける内容には、以下の制約があります。

  • 法令や公序良俗に反しないこと
  • 営利目的であること
    • 例えば「寄付」や「政治献金」は営利目的にはならないので書けません。
  • 明確で、具体的な内容であること
  • 許認可が必要な事業を書く場合には気をつける(許認可をとる)
    • 不動産業、建設業、旅行業、人材派遣業など

これらにくわえて筆者としては、以下のような点に注意したらよいと思います。

  • 事業内容は、今できることの中から考えるのがよく、ゼロから習得しなければならないものは避けたほうがよいでしょう。
    • そのいっぽうで、今できることだけ、一本だけで勝負するのは誤っている気がしています。世の中や時代は移りゆくものです。自分のがんばりで手が届くと思える領域の事業であれば、入れておいてよいというのが筆者の考えです。
  • 仕事の当てがある(ありそう)な事業は入れておきましょう。
    • どんな形態の会社でも、会社は利益を追求するのが本分ですので。

会社の事業 こんな感じはどうでしょう

筆者はIT関連の仕事を長年続けてきていましたので、コンピュータ関連くらいでしか会社の事業の想像がつきません。みなさまの参考になるかどうか自信はありませんが、以下のような例はどうでしょうか。

  • 企画・設計・作成:ITシステムの設計やプログラミング
  • コンサルティング:得意分野についてのコンサル業務
  • 運用・運用支援:熟知しているシステムの運用(またはその支援)
  • デジタルコンテンツ:デジタルの画像・動画・音楽等の制作や配信
  • 教育:得意分野、資格を持っている分野に関する教育活動
  • 調査研究:特定の得意な領域についての調査や研究

これらのうちから2つ3つを会社の事業としてピックアップしてみます。どれをとっても互いに、微妙に関連していて、全体としてもIT関連の大枠の中に納まっている(一定のまとまりを感じられる)と思うのです(私見です)。

筆者の意見では、自分の得意なことや興味がある領域で、できれば長年手掛けてきたことが望ましいと思うのです。例えば会社生活で長年手掛けてきたこと、またはそれに近接した領域は一番確度が高いと思えます。
そのいっぽう、あえて興味がないことに取り組むのは苦痛ですからやめたほうがよいと考えています。このコラムの読者として考えているのは、第一には定年後の隠居老人風起業家ですので、残りの人生はできるかぎり苦痛から遠ざかっていたほうがいいと思うのです。 例えば、儲かりそうだという理由だけで飛び込むのはストレスの元じゃないでしょうか。